2019年の2月のこと。7年異動が無かった夫に辞令が出ました。夫は東京本社に勤務していて、私も東京の会社に勤め、首都圏の便利な暮らしにすっかり慣れていました。
赴任先は北海道の聞いたこともない町。ホームページをチェックしたら人口の少ない、小さな町でした。夫には悪いですが、左遷という言葉が頭をよぎりました。
北海道には何度も訪れていたけれど、観光ではスポットが全く当たらない地域。札幌出身の身内からは「あのあたりは北海道の中でも特に何もないところ」と言われ、さらに不安になりました。
3月初旬、子どもたちを親に預け、夫婦のみで現地調査に行きました。
夫は引継ぎのため赴任先営業所へ、私は雪で覆われた町を一人で探索しました。転居予定のマンション周辺、スーパー、こども園、郵便局、役場を順にチェックしました。とても小さな町、徒歩でもたった2時間で見て回れました。
鉄道も通っていない僻地の町。町から町の間にはひたすら広大な大地が続いているだけ。
ここでやっていけるのかな、私。
道の駅で、町を見つめながらそう思ったことを強烈に覚えています。
都会の便利な町から北国の田舎町へ転勤した、転勤妻の感想です。
田舎町の衝撃!都会との違いに驚く転勤族の妻。
先にハッキリ宣言しておきましょう。
田舎町での2年半は最高でした。
コンビニ感覚で行ける役場、誰もいない図書館、誰もいない公園。何でも助成がある教育費に、いい意味で適当な小学校。そのどれもが快適でした。
もちろんマイナス面もありました。マイナス面が知りてぇんだ!という方は⇒後半まで飛ばして読んでください。わりと辛らつに、正直に書いております。
ココが最高、田舎町:役場は常に一番目。
都会はマイナンバーカードを持っていれば、コンビニから各種証明書を出すことができました。課税証明書だの、住民票だの。マイナンバーカード作って良かったぁ~と思っていたのです。ところが田舎町はこの便利な機能を導入していないと言われました。
「何だって!?マイナンバーカード持っていても意味ないやん」
と、最初は損した気持ちになりました。
でも心配ご無用。別にコンビニなんて行かなくても役場がコンビニ感覚で利用できるのです。
課税証明書を取りに行こう!
と思ったら、昼休みに車でプラ~ッと役場へ行けば、5分で交付が終わります。都会だと整理券をとって1~2時間待つのが普通だけど、田舎町は違う。役場はどの窓口に行っても基本的に一番目に案内されるのです。
ココが最高、田舎町:子どもの助成が手厚い。
ココが最高、田舎町:ゆる~い小学校。
個人的には大当たりの小学校でした。
ココが最高、田舎町:待たない、空いている、密無し。
予約合戦が無い世界って最高ですよね!
ココが最高、田舎町:町がミニマム=何でも近い。
夫の通勤時間、車で3分です。歩いても8分。
私は転勤によりテレワークになったので0分です。
小学校、こども園、役場、郵便局、図書館、どれも車で10分以内です。
夫の職場が近いことは、特に我が家にとってメリットがありました。夫が家事・育児に参加しやすくなったのです。都内に通勤していた頃は、満員電車にもみくちゃにされながら40分かかっていたので、通勤するだけで疲れてしまいます。田舎では数分の距離なので、出かける時間も、帰宅する時間も余裕があります。園への送り、園と学童のお迎えを夫に頼むことができたので、私は家事に集中でき、夫婦どちらかに偏ることなく分業ができました。
ココが最高、田舎町:食べ物がおいしい。
新鮮な筋子が売っているのでシーズン中は醤油漬けにして、毎朝イクラを食べていました。寿司屋、羊肉へのハードルも低いです。乳製品や豆類も豊富でした。
そして田舎特有の話で、食べ物がご近所から流れてきます。マンションのお隣さんや、近所の方からトウモロコシ、トマト、じゃがいもなどをよく貰いました。とうきび(トウモロコシ)は本当に美味しかったです。甘みが違いました。
園や小学校には保護者や地元農家からの差し入れがあり、お迎えに行くと「〇〇町の××様から頂きました」と書かれ、ご自由にどうぞと入口に野菜が置かれていました。北海道産の野菜が取り放題なのです。
給食のメニューがとにかく美味しそうでした。十勝牛のすき焼き、北海道産小麦のパニーニ、十勝産あずきのおはぎ、などと書かれているのです。
給食の献立を眺めるだけでお腹が減る!
田舎はお金がかかると言うけれど?
車の維持費や光熱費が高いので結果的に田舎はお金がかかる、という意見があります。
確かに上記2点はその通りです。うちも車を1台追加購入しましたし、冬場の光熱費(プロパンガス代)は卒倒するほどの高さです(参考:【悲劇】同じ家族構成でここまで違う、寒冷地の光熱費。)。でもこの2年半は、我が家としては爆発的に資産が増えました。
帰省費が発生しなかったのは大きかったかも知れません。
住宅費は車2台分の駐車場代を含めても2万程度(会社の住宅補助を差し引いた自己負担額)なので、共働きしていれば嫌でもお金は貯まります。
子どもの助成について。
幼児教育無償化の恩恵と、町からの給食費おやつ代負担により、月~金まで、7時半~18時で預けて、費用がまったく発生しないという素晴らしさです。スポーツ振興センターの掛け金も町が負担してくれました。
お得な商品券について。
町や商工会議所の事業として、年に3回くらいお得な商品券が発行されていました。
例)
・1万円で1万5千円使える商品券。(還元率50%)
町内のほとんどのお店で利用可能。
→我が家はガソリンスタンドで使用しました。
・3千円で6千円使える食事券。(還元率100%)
町内の飲食店、パン屋、ケーキ屋等で利用可能。
→我が家は寿司屋で使用しました。
購入枚数は5セットまで、などと決まっていて希望セット数を書いて応募すると後日「応募多数により調整しました。あなたは4セット購入できます」といったような通知が来ます。発売日に混乱が起きない売り方なのも魅力です。
ママ友はいなかったけれど、それはそれで良かった。
フルリモートで働いていたので、地域の知り合いはできませんでした。挨拶やLINEをちょっとする程度の人はいたけれど、ランチしましょ!っというママ友はついにできず。
でも私にはそれが良かったです。情報が入らないので余計な情報に左右されません。
・ママ友の子はもうあんなことができる、
・うちの子だけ〇〇が遅いな、大丈夫かな、
・A家とB家は仲が良いらしい、
というような負の感情に支配されることがなく、私の心は安定していました。悩みと言えば単純に「寂しいなぁ」という1点のみです。
とはいえ、長らく続くコロナの自粛生活で
私はこのままひとり家で仕事して、休みの日に公園に付き合って、老いてゆくのかな、
と、不安に襲われることもありました。
引きこもりが長すぎて辛かった。
初めての雪国生活、驚きの数々。
雪国というと、冬場の暮らしの厳しさを想像し、やっかいだなぁと最初は思っていました。私が住んでいた地域は、北海道の中では降雪が少ない地域でしたが極寒でした。家の中でダウンジャケット着ているのは普通のことです。8月、お盆を過ぎるともう夏は終わりと言われていました。
雪国びっくり1:小学校の体育でスケート!
札幌の方ではスキーらしいですが、住んでいた地域はスケートでした。極寒で、雪質がスキーに向かないためです。
小学校の校庭にスケートリンクが作られます。町が管理している町営リンクのため、町の人は誰でも滑ることができていました。
スケート靴はレンタル店に行って借りました。貸出期間が選べて、11月~2月まで借りました。レンタル料は5千円くらいだったでしょうか。町にはスケート少年団というのが冬季限定で活動していて、夏季は水泳、冬季はスケートと使い分けているお子さんもいました。
雪国びっくり2:タンチョウが目の前に。シカもいれば熊もいる。
一年中丹頂(タンチョウ)を見かけました。たんぼにいるんですよね。雪景色の中で見るとより美しく見えます。
タンチョウは本来渡り鳥ですが、道東に生息しているのは留鳥(りゅうちょう)です。1年を通してその優々たる姿をご覧いただけます。
https://www.visit-hokkaido.jp/
シカやキツネもよく見かけました。熊は目視したことはありませんが、公園に現れた(フンがあった)という情報が町内放送でかかっているのを耳にしました。
雪国びっくり3:除雪作業車が自宅まで来てくれる。
11月頃から雪が降り始めます。週に1回程度積雪し、その他の日は快晴が多かったです。
大家さんが町と契約しているのか、マンションの駐車場まで除雪車が来てくれるので、ほとんど雪かきする必要がありません。雪かきを覚悟していたのですが、この点は楽でした。※周辺の戸建ての人は自分で雪かきされていました。
車を出すときは雪を払う必要があるので、雪かき道具は必要です。我が家ではスコップと車用のブラシを購入しました。こいうやつ↓
怖いのが雨や晴れた日の翌日です。
1.雪が降る。
↓
2.雪がとける。
↓
3.夜間の寒さで凍る。
↓
4.町中天然リンク状態に。
園の駐車場が全面氷でおおわれていた時は、どんなに気を付けていても滑るのでドキドキしました。夫の職場では冬場の自転車通勤が禁止になります。趣味のロードバイクに乗って夏場に一周という方はいますが、いわゆるママチャリはほとんどお見かけしません。
雪国びっくり4:ストーブは備え付け、灯油は自動給油される。
暖房と言えばストーブです。灯油は移動販売車が売りに来て売っていることがありますが、寒冷地は買いに行く必要はありません。
マンションには備え付けのストーブがありました。管があって、自動で補給されます。建物の外にタンクが設置されていて、業者が定期的に給油してくれます。月ごとにメーターチェックされ、利用した分だけ請求される仕組みです。うちはガス代と同時に口座振替されていました。
誰もが同じ感想になるわけじゃない。タイミングが良かっただけ。
北の田舎町を絶賛している私ですが、こちらの土地は誰しもがOKな地域ではなかったと思います。私にしたって、タイミングが違えば文句タラタラだったと思います。やっぱり不便なことも多い。
ここが困った、田舎町:病院が無い。
田舎町に来たのは二人の子を出産した後でした。これから赤ちゃんが欲しいな、と思っている段階で転勤になっていたら感想はまったく違ったものになっていたことでしょう。
産める場所が無い
からです。妊娠したら1時間以上かけて遠くのクリニックに通う必要があります。冬場の出産で産気づいたらどうやって雪の中病院へ行ったらいいのでしょうか。考えただけでもゾッとします。
田舎町に転勤したのが、新婚当初、または妊娠中、あるいは二人目を出産する前だったら
このク〇田舎がぁぁぁぁぁ!!
と、ほぼ毎日毒づいていたと思います。
そもそもですね、私は二人目は無痛分娩じゃないと授かろうとも思いませんでした。無痛分娩が選べぬ土地では家族計画そのものが狂ってしまいます。
産院だけでなく、皮膚科や整形外科のクリニックもありません。町内病院があり、決められた曜日に担当科の先生が来てくれる仕組みになっていました。今日行きたいと思っても行けないのです。夫が足を骨折した時には、左足だったので1時間運転して整形外科に通っていました。
ここが困った、田舎町:チェーン店が無い。ジャンクフードへの飢餓感。
気軽に利用できる飲食店がありません。ファーストフード、ファミレス、コーヒーチェーン、回転ずし、うどん店、牛丼店、お弁当屋など、あらゆる種類のチェーン店がありません。宣伝で見かける新商品は食べられないのです。
個人で経営している寿司屋、そば屋、お食事処はあります。でも日曜日はお休みしているお店が多いです。夜も早いです。そして何となく敷居が高い。飲食店に行くとなると「今日は外食するぞ!」という気概が必要になります。
ご飯作るの面倒だからあそこで済ませよう、ができません。だからほぼ三食自炊していました。手を抜きたい時は生協の半調理品か、コンビニ飯になります。※コンビニはセブンとローソン、そしてセイコーマートがありました。
都会に住んでいた頃には避けていたマクドナルド。田舎に住んでから食べたくて仕方なくなりました。夫が釣りに行く時にまとめ買いしてもらっていました。マクドナルドまで50㎞の距離ですので、当然冷めます。ポテトは冷めると美味しくないので、チーズバーガーのみ8個とか買っていました。トースターで温め直して食べていました。
そしてまた都会に戻ると、そこまで食べたいとはならない。
ここが困った、田舎町:光熱費高すぎ。LPガス、オワタ。
冬の光熱費が高い。夏も総じて高めですが、とにかく冬です。プロパンガスが高い。そして暖房費(灯油代)もバカになりません。
冬の光熱費についてはコチラ↓↓↓
ここが困った、田舎町:運転できないと詰む。ガリガリツルツル道の恐怖。
運転免許は必須。
都会だと運転する機会が無いので、免許は持っていてもペーパードライバーという方が多いですが、田舎は運転できないと即詰みます。運転免許を持っていない、もうこれは死亡フラグです。車必須の環境なのに、教習所が町には無いのです。遠方の町まで行かないと免許取得できません。バスはありますが、1日に何本もありません。小さい子がいる場合、教習所に託児サービスがあっても、行くまでが大変すぎて通えないと思います。
自転車という交通手段について。
4月~10月頃までは自転車の利用も可能ですが、雪が降る季節には利用できません。大人一人ならまだしも、子乗せ自転車は危険です(そもそも子乗せ自転車を見かけません)。
夏に自転車で教習所に通うことは可能か?と言えば、それは厳しいと思います。自転車で通えるような距離じゃないのです。※ロードバイクが趣味の人だったら行けるかも知れません。
運転できる人であっても、雪国の運転は大変。
雪が降ってはちょっと溶け、降っては溶けを繰り返し、ガリガリツルツルの道になります。ブレーキがうまく動作しません。除雪した雪が道のあちらこちらに積まれるので、車道が狭くなり、見通しも悪くなります。私は10年以上の運転歴で、関東時代も常に運転していましたが、雪道運転では何度もヒヤリハットを経験しました。
そもそも運転する前に、雪の上げ下ろしの技術も必要です。屋根に雪が残っていると、走行中にドサッとフロントガラスに落ちてしまうので、完全に除雪しないといけません。
ここが困った、田舎町:年々減りゆく人口に、撤退する企業。
私が住んでいる期間も年々人口が減っていました。子のクラスも入学時28人くらいだったのが、徐々に減り、我が子が転校する頃には24人になりました。
大きい工場も撤退するという噂が流れていました。果たして10年後、この町はどうなっているのだろうか?という漠然とした不安があります。
この町に永住しよう、とはなりません。
終わりに。
最初に町を知った時は「ここに住めるのか?やっていけるのか?」と不安になっていたのに、気付けば去りがたい土地になっていました。イクラを飲むように食べたこと、毎週末の子どもたちとの雪遊び、忘れることができません。
最後の最後まで北海道グルメを堪能しました。スィートポテトで有名な「クランベリー」、そして北海道のお土産で有名な「六花亭」本店に寄り、私の北海道生活は幕を閉じました。
コロナ禍で、札幌・小樽・旭川などの人気スポットには訪れることができませんでしたが、知床・網走・釧路・阿寒・静内・襟裳岬等のコアな北海道を堪能できました。また機会があったら北海道に住んでみたいです。
以上、北海道の田舎町、2年半の想い出でした。
コメント